中国武術文化を語る

2015年12月6日
 

 中国の長い歴史と同様、中国武術は一つの文化として生まれ、成長、変化し、今日まで発展して武術体系を自然に形成してきた。時代によって変動があるが、私は大きな部分は変わらないと思っている。

 先ず、礼儀について、やはり中国武術は仁、義、礼、智、信がいつも道徳の基準となり、精神の柱になっている。

 中国武術、太極拳を練習すると同時に“武徳”方面を精進しないといけない。何故なら、心が綺麗ではなく、人格がずれている人は何時までも正しい技術が身に着かないからである。

 中国武術はやはり宗教と関連がある。例えばイスラム教(回教)は査拳や心意六合拳であり、佛教は少林拳などで、道教は峨嵋山武術等である。

 中国武術文化には「人不犯我,我不犯人,人若犯我,我必犯人」の哲学がある。即ち、「他人が私を侵犯しなければ、私は他人を侵犯しない。他人が若し私を侵犯すれば、私は必ず他人を侵犯する」と言う意味である。これに沿って各流派とも、先に他人に攻撃する動作はほぼない。多くは防いでから反撃するか、防ぎながら攻撃するかである。

 中国武術文化の基礎理論は人体解剖学、人体生理学、経絡学などであり、同時に運動力学(例え:軸、重心、運動面など)で心理学、運動学などである。中国には師範大学や体育大学に体育系、武術科などが存在している。そして、全国に専門人材、研究機関、コーチ、監督、チームなどがいる。小学校から大学まで体育の科目に武術教学の内容がある。当然、中国社会に武術内容は広く普及している。例えば朝、公園で武術、太極拳のグループが活動していることなどが挙げられる。

 勿論、長い歴史の中で武術は政治と軍事と緊密に関連している。“文能安邦,武能定国(文は人々の心を掴み、武は定国する)”からである。そして武術は職業として昔から拳師、街頭買芸(武術大道芸)、映画(スタントマン)、ボティガード(保鏢)、京劇、武道整復(推拿整体)などがある。

 今、武術は大体主に 一、伝統武術、二、競技武術、三、健康武術に分けられる。

 

一、伝統武術

 中国の長い歴史の中には色々な武術流派が生まれた。華拳、査拳、大洪拳、小洪拳、太極拳、八極拳、南拳、心意拳、通背拳、戳脚、形意拳、蟷螂拳、翻子拳等々である。

 伝統武術に於いて各流派の目的は鮮明である。自分を守るためにあらゆる格闘の方法を技にする。用法を重視する。心の面は心神、神志を鍛練する。技の面について、内在は用法、呼吸(拳勢呼吸)、外在は精技(癖と無駄な動きがない技)を重視し、上肢、下肢、動作で用法(内在)によって動く。同時に体(体質)を強化する。例えば排打などである。格闘技として心、技、体を日常に鍛える。

 

二、競技武術

 競技武術は近代武術とも言う。競技するために安全第一と考えながらルールを作って試合ができるようにする。

 競技武術は外観と難度を重視して化粧、服装などの装飾を見せることになり、時々、音楽を付けて演武する。難度に関しては、例えば“旋子転体360°、側空翻、側空翻転体360°”などを競技套路の中に組み入れて競技難度を競い合う。

 競技武術は完全に“武の舞術”の方向へ進んでいるようである。

 

三、健康武術

 健康武術としては気功(呼吸法)や練功十八法などが普及している。心を癒し、遊び心でリフレッシュする。体質改善が目的である。一般的にゆっくり動く太極拳と組み合わせて行う。

 中国武術はアジア運動大会に科目として試合がある。然しオリンピックの中には武術の試合科目は成立していない。何故ならば、武術運動は内容が多く、基準の設定、鑑定の難しさがあり、演武として客観的に評価、審判し難いなどの理由である。然し、武術をオリンピック大会の科目として認定を求める為に、中国には大勢の武術技術者たちが懸命に努力している。何故なら、「中国から世界へ貢献したスポーツ科目が今までに一つもないから」との思いがある。期待が現実になれば中国にとって悲願の達成と言えるではないでしょうか。

 

© 2015 All rights reserved.| は無断で加工・転送する事を禁じます。

無料でホームページを作成しようWebnode