武術の手型を巡る旅

2016年2月29日

手型は武術運動における手の形状である。武術文化の内容の一部である。

中国武術には武術門派、流派がたくさんある。各門派、流派により手型がそれぞれに求められる。手型によって様々なオリジナル技が形成され、運動の中に顕れている。科学性もあり、内容が豊かで中身もとても深い。その様々な形が美しく、面白く、堪らなく魅力的である。

今回は各流派の、主に代表の手型の拳、掌、勾、爪、指を巡ってみよう。

 

一、拳

先ず拳の平拳(立拳)、龍眼拳、扣拳、透骨拳、龍頭拳を巡ろう。

1、平拳(立拳)

中国武術の各流派の中で平拳(立拳)は普通使っている。平拳は拳面(拳頂)も、拳背も、拳輪も平で一直線を要求している。だから平拳と言う。平拳を90°に回転したら立拳と称する。主に長拳類、例えば自選拳、華拳、査拳などが代表的に使っていて他に太極、心意、南拳等も使っている。拳は拳背、拳面(拳頂)、拳眼、拳心、拳輪の部位に分けられる(図1.2)。

2、龍眼拳  

 主に形意拳流派が使用している。形意拳の基本は劈拳、崩拳、鉆拳、砲拳、横拳がある。此の五つの拳は五行と呼ばれている。五つの拳の中に劈拳は掌で行い、崩拳、鉆拳、砲拳、横拳は全部拳で行う。

龍眼拳は単龍眼拳と双龍眼拳がある(図3.4)。常に平拳と同時に形意拳、或は套路に構成して訓練する。

3、扣拳   

扣拳はとても自然に握る拳で使い易い。通背、翻子、八極などの流派が応用している。扣拳は特に通背拳流派が使われている。相手の“人中穴”に打ち込み、攻撃して重傷させる(図5.附図5)。 

4、透骨拳    

透骨拳は肋骨の隙間を打つ拳である。透骨拳は肋骨と肋骨の間に“一撃”する。若し、攻撃が成功すれば本当に効果的で、相手は悶絶して無力化する。

5、龍頭拳

龍頭拳は主に通背拳の流派が使っている。扣拳と巴掌などの手型と交互して訓練する。龍頭拳の手型は時々、他の流派も使っている。

二、掌

続いて掌の種類、柳葉掌、瓦龍掌、八字掌、巴掌を話そう。

1、柳葉掌 

柳葉掌の形は早春の柳の葉のように春風に吹かれて綺麗な動きを、素敵な掌の動きと連想されて“柳葉掌”と呼ばれているようである。普段、長拳、華拳、大洪拳、小洪拳などの流派が使っている(図8)。

2、瓦

此の手型は瓦龍(カワラ)と似ているから“瓦壠掌”と呼ばれている。回教(イスラム教)の査拳流派の特徴であり、査拳の基本、“十路弾腿”から徒手、機械、対練など、全ての内容の掌は瓦壠掌で行う(図9.附図9)。

3、八字掌

親指と人差し指が“八”の文字となり、他の掌と区別して分かりやすくする為に“八字掌”を命名されたかもしれない(図10.附図10)。八字掌は八掛掌流派が代表として此の掌の形で行う。八掛掌流派は用法として主に掌根と前腕で格闘する。凄く特徴があるから中国武術界に一定の地位を持っている。

4、巴掌

五本の指を自然に開いて無理なく形成された掌である(図11.附図11)。町の人々も“巴掌”と言う言葉を使っている。例えば喧嘩する際、脅し文句として“你当心吃巴掌(お前は気を付けろ、巴掌で撃つぞ!)”などの言葉を使用している。

中国武術の中には形意、心意、太極、劈掛、通背などの流派がほぼ巴掌を掌として使っている。

三、勾

勾は又、勾手と言う。勾手は平勾、査勾、蟷螂勾などがある。

1、平勾  

平勾は平拳とセットになって常に長拳種類、例えば自選拳、華拳、大洪拳、小洪拳、少林拳などで使用され、太極拳も此の平勾を使っている。平勾自体にも色々な形が溢れている(図12.附図12)。

2査勾

査勾は瓦壠掌とセットで査拳門派の基本手型を形成する(図13.附図13)。査拳門派は回族(イスラム教)の拳派であり、其の風格は宗教上の戒律“酒を飲まない。タバコは吸わない” に見られるように、人々が真面目で誠実の印象であり、套路も一つ一つの動作が正確に動き、“動作厳謹,僕実大方(動作は確実に、堂々としている)”と評判されている。

3蟷螂勾  

蟷螂勾は又、蟷螂手と称する(図14.附図14)。蟷螂拳門派の代表性の手形である。蟷螂拳は北派蟷螂拳と南派蟷螂拳があり、そして色々な流派も複数存在している。然し、各種宗門、流派の蟷螂手の用法はおよそ三つに纏められる。①蟷螂手で相手の腕を巻き込み引き回し敵の体勢を崩させる。②指で相手の目に刺す。③勾背で相手の鼻に撃つ。

4、鶴勾

 

中国福建省と台湾で流行している白鶴門拳法の中に勾の手型がある。鶴拳は、実戦的で修練に実用性と即効性があり、特に台湾で非常に有名である。鶴勾で防ぐ、反撃など、用法は豊かである。

四、爪

爪は一般的に象形拳、南拳で多く使用されている。心意六合拳・十大形も爪形を多数要求している。ここで虎爪、鷹爪、猴爪を話してみよう。

1、虎爪                

虎爪は主に南拳流派が使う。中国広東、広西、福建周辺区域で流伝している武術流派である。虎拳、虎形、虎爪は“威風堂々”で人々に威を与える(図16.附図16)。

2、鷹爪

鷹爪は主に鷹爪拳流派の手型である。用法は八字訣語の抓、打、擒、拿、翻、崩、肘、靠を要求している。象形拳の中で非常に人気な拳種のひとつである(図17.附図17①.17②)。心意六合拳・十大形の中に鷹形があり、鷹爪の手型はとても重視する。“把々不離鷹捉”を精進する。

3、猴爪

猴爪は猴拳の手の形である(図18.附図18.)。猴拳は猴の動きを観察し、実用性のある動作を真似して構成した象形拳である。特に両肘で腋下を触れながら動くことが特徴である。猴爪で主に相手の顔面や顎や急所などを攻撃する。

心意六合拳・十大形の猴形の技は猴爪で相手の顎を一撃し“一招制敵”(一撃で敵を制する)することができる。

五、指

指の種類、用法は比較的多く複雑であり、攻撃部位は全て急所であり、僅かな力で相手を致命傷に至らせることが出来る。此れが指の技の特徴である。ここでは二指、蛇指、掌指を巡ってみよう。

 

1、 二指 

 

華拳、通背拳、査拳などの流派の中に隠された技と言われている。“一寸長,一寸強”の優勢を発揮する。即ち、自分の手の末端を使い最長の攻撃距離をとり、鋭く攻撃する。そして相手の急所を攻撃、致命傷に至る。

2蛇指

此の蛇指は心意六合拳・十大形に隠れている蛇形の手型である。相手の喉に刺し貫く使い方だ。“殺手鐗(人を殺す道具)”技と言われ、あまりにも危険すぎるので一般には公開しない。

3掌指

掌指は蛇拳の専用指法である。掌指は一見すると掌に見えるが、用法は実は指である。だから指に所属される。用法として主に掌指で眼や喉や肋間などに挿し込み、相手に意識を失わせる。

武術の手型は中国武術文化である。豊かな内容であり、そして色々な面白さが溢れている。どの角度から評価しても楽しくて味わいが深い。何度も読んでも飽きが来ないでしょう。

以上、我々は中国武術の手型を巡りました。今後、中国武術のビデオ、映画、武術試合などを鑑賞する時には手型に注目すると面白さや興味が増すと思います。また練習の際に参考にされるとさらに味わいが深くなるのではないでしょうか。

 

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